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群れに拒まれ傷だらけだった子ザル「あやこ(Ayako)」——落川動物園の人気者パンチと奇跡の絆

野生の群れでいじめられ衰弱していたニホンザルの子ザルが、かつて同じ境遇を経験した落川動物園のパンチと出会い、寄り添い始めた。

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落川動物園のニホンザル あやこ
落川動物園に新たに仲間入りした「あやこ(Ayako)」。生後約5ヶ月のニホンザルのメス。群れの中でいじめを受け、体中に噛み傷を負った状態で保護された(2月27日、落川動物園にて撮影)

落川動物園に1匹の子ザルがやってきた。体中に噛み傷があり、右手の指が1本欠けていた。群れの仲間たちに拒絶され、追い出された生後5ヶ月のメスのニホンザル。名前は「あやこ(Ayako)」。

この子ザルを最初に受け入れたのは、動物園で一番の人気者——そして、かつて自分も群れからいじめられていた、あのパンチだった。

山の中で見つかった傷だらけの子ザル

2月20日の朝。茨城県落川市の山林で、地元の登山者・藤田健一さん(64)が異変に気づいた。登山道から少し外れた斜面に、小さな影がうずくまっていた。

「最初は木の根っこかと思いました。でも近づいたら、サルの子どもだった。こっちを見ても逃げないんです。普通、野生のサルはすぐ逃げるでしょう。それが、じっとこっちを見ていて。目が、なんかもう諦めたような目をしていて」。

子ザルの体には無数の噛み傷があった。背中、腕、耳。右手の小指がなかった。明らかに群れの中で激しい攻撃を受けた痕だった。体重は平均の半分以下。脱水と低体温で、ほとんど動けない状態だった。

治療を受けるあやこ
落川動物園の獣医療センターで治療を受けるあやこ。保護時は脱水と低体温で衰弱しきっていた。噛み傷は30カ所以上にのぼった。

「群れにいられなくなった子」

連絡を受けた落川動物園の獣医・山口真理子さん(45)が現場に急行した。「ニホンザルの群れでは、序列の低い個体や弱い個体がいじめの対象になることがあります。特に母親が群れの中で低い立場にある場合、その子どもが集中的に攻撃されることがある」。

あやこの傷の状態から、山口獣医師は数週間にわたって繰り返し攻撃を受けていたと推測する。「新しい傷と、治りかけの傷が混在していました。何度も噛まれて、それでも群れにしがみついていたんだと思います。最終的に耐えられなくなって、群れから離れたか、追い出されたか」。

子ザルは動物園の獣医療センターに搬送され、点滴と抗生物質の投与が始まった。3日間は自力で食べることができなかった。スタッフがスポイトで少しずつミルクを与え続けた。

名前は飼育員の提案で「あやこ(Ayako)」と名付けられた。

パンチの過去——「あいつも、同じだった」

落川動物園には、来園者から絶大な人気を誇る1匹のニホンザルがいる。パンチ、オス、推定4歳。SNSのフォロワーは12万人を超え、グッズも販売されている。丸い顔と、どこかとぼけた表情がトレードマークだ。

だが、パンチにも暗い過去がある。2023年に別の動物園から移送されてきた当時、パンチもまた群れの中でいじめられていた個体だった。体に古い噛み傷が残り、他のサルが近づくと怯えて隅に逃げ込んでいた。食事の時間になっても、他のサルに横取りされるのを恐れて近づけなかった。

「パンチが来た頃は、正直、展示できる状態じゃなかったんです」と、飼育担当の野村大輔さん(36)は振り返る。「痩せていたし、毛並みもボロボロだった。目も合わせてくれなかった」。

野村さんはパンチを単独飼育に切り替え、毎日同じ時間に餌を与え、ただそばにいる時間を積み重ねた。半年かけて、パンチは少しずつ心を開いていった。今では園内の人気者で、来園者に手を振る姿が何度もSNSでバズっている。

初対面——パンチが動いた

あやこが動物園に来て5日目の2月25日。獣医の許可が出て、初めてパンチのいる飼育エリアの隣に移された。ガラス越しに互いの姿が見える配置だった。

「普通、新しい個体を近くに置くと、既存の個体は警戒するか無視するかのどちらかなんです」と野村さん。「でもパンチは違った。ガラスの前に座って、じっとあやこを見ていたんです。30分くらい、動かなかった」。

翌日、仕切りを金網に変え、匂いが伝わるようにした。パンチはすぐに金網の前に来て、指を差し入れた。あやこは最初、怯えて隅に逃げた。だが数時間後、自分から金網に近づいてきた。

「パンチが金網越しにあやこの毛をグルーミングし始めたんです。サルにとってグルーミングは信頼の証。まだ会って2日目ですよ。パンチが自分からやったのは初めてでした。あの瞬間、飼育棟にいたスタッフ全員が泣きました」 —— 落川動物園 飼育担当 野村大輔

2月27日——同じ部屋へ

慎重な経過観察の末、2月27日に同じ飼育室に入れる判断が下された。スタッフ全員が緊張して見守った。

パンチは部屋の中央で座っていた。あやこが扉を通って入ってくると、パンチはゆっくり近づき、あやこの頭に手を置いた。あやこは一瞬体をこわばらせたが、逃げなかった。そのまま、パンチの胸元にうずくまった。

「私は20年以上サルを見てきましたが、あんな光景は初めてです」と山口獣医師。「パンチは自分がされたことを覚えているんだと思います。いじめられて、怯えて、誰にも頼れなかった。だからあやこを見て、何かを感じたんじゃないでしょうか。科学的に証明はできませんが——あれは、ただの本能じゃないと思います」。

それ以来、パンチとあやこはほぼ常に一緒にいる。食事の時、パンチは自分の分をあやこに分け与えることもある。夜は寄り添って眠っている。あやこの噛み傷は順調に回復しており、体重も増え始めている。

SNSで話題沸騰——「涙が止まらない」

野村さんが2月27日にInstagramに投稿した、パンチがあやこの頭に手を置く写真は、24時間で45万いいねを記録した。「いじめられっ子同士の絆」「パンチが分かってるんだよ」「動物園行くしかない」とコメントが殺到。落川動物園の公式アカウントのフォロワーは3日間で8万人から32万人に急増した。

動物園には全国から手紙や寄付が届いている。「パンチとあやこに使ってください」と書かれた封筒が、1日に100通以上届く日もあるという。園は新たに「パンチ&あやこ基金」を設立し、ニホンザルの保護活動と飼育環境の改善に充てる方針だ。

落川動物園は3月中旬から、パンチとあやこの飼育室を来園者が見学できる特別展示を開始する予定。野村さんは言う。「2匹を見てほしいんです。いじめられて、傷ついて、それでも誰かと寄り添える。人間も動物も、きっと同じだと思うので」。

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コメント(2件)

パンチ推しの母 2026年2月28日 19:15

パンチが金網越しにグルーミングし始めたところで号泣した。パンチ自身がいじめられてた過去があるから、あやこを見て何か思い出したんだろうな……。来週絶対会いに行く。基金にも寄付しました。

霊長類研究者 2026年3月1日 08:42

ニホンザルの社会は序列が厳しく、弱い個体が集中的に攻撃されることは珍しくありません。ただ、パンチのように過去にいじめを受けた個体が、同じ境遇の個体に自発的にグルーミングを行うケースは非常に稀です。共感に近い行動と言えるかもしれません。今後の観察が楽しみです。