環境省は2月19日、2025年度(2025年4月〜2026年1月の速報値)における全国の保護猫譲渡数が5万8,341匹となり、統計を取り始めた2004年度以降で過去最多を更新したと発表した。前年同期の5万1,127匹から14.1%の増加で、初めて5万5千匹の大台を突破した。年度末の3月まで含めると、6万匹を超える可能性が高いとみられている。
譲渡数の増加は全国的な傾向だ。都道府県別で見ると、最も多いのは東京都の5,892匹(前年同期比18%増)、次いで大阪府の4,103匹(同12%増)、神奈川県の3,847匹(同16%増)の順。地方でも増加が目立ち、鹿児島県は前年同期比32%増の1,421匹、沖縄県は同28%増の987匹と大幅に伸びた。
コロナ禍で生まれた「ペットとの暮らし」志向
譲渡数増加の背景には、コロナ禍をきっかけに定着した「ペットとの暮らし」への関心がある。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2025年の全国犬猫飼育頭数は犬684万匹・猫906万匹で、猫はコロナ前の2019年(978万匹)からは減少しているものの、2023年の862万匹を底に再び増加傾向にある。
注目すべきは、その中で「保護猫から迎える」という選択をする人の割合が急増していることだ。2019年には新たに猫を迎えた飼い主のうち保護猫を選んだ割合は21%だったが、2025年には39%まで上昇した。ペットショップでの購入割合は同期間に67%から48%に低下している。
シェルター関係者は歓迎と警戒の両面
譲渡数の増加は動物保護に携わる人々にとって喜ばしい数字だが、手放しでは喜べない事情もある。千葉県柏市で保護猫シェルター「ねこの方舟」を運営する吉田裕子さん(56)は「譲渡が増えること自体はもちろんいいこと。でも同時に、飼えなくなったという相談も増えている」と表情を曇らせる。
吉田さんのシェルターに寄せられる飼育放棄の相談は、2023年度の47件から2025年度(1月末時点)は83件に増加した。理由で最も多いのは「引っ越し先がペット不可」(22%)、次いで「アレルギーが判明」(18%)、「経済的な理由」(16%)、「思ったより手がかかる」(14%)の順だ。
「保護猫を迎えること自体は素晴らしいことです。でも、15年、20年という猫の寿命を見据えて、本当に最後まで一緒にいられるか。それを考えてから決めてほしい。安易に飼い始めて、また保護施設に戻すのでは本末転倒です」 —— 保護猫シェルター「ねこの方舟」代表 吉田裕子
自治体の取り組みに温度差
保護猫の譲渡促進に向けた自治体の取り組みには、地域によって大きな温度差がある。先進的なのは神奈川県で、2025年度の殺処分ゼロを8年連続で達成。県が独自に開発した「マッチングアプリ」で保護猫と希望者を結びつけるシステムが功を奏している。このアプリは登録者の住環境、生活パターン、希望する猫の性格などをAIで分析し、相性の良い猫を提案する仕組みだ。
一方で、地方の一部自治体では予算不足から保護施設の収容能力が限界に達しているケースも少なくない。九州のある県の動物愛護センター職員は「保護の依頼は増えているのに、施設のキャパシティーは10年前のまま。譲渡を進めないと施設がパンクする。ボランティアの方々に頼り切りの状態」と窮状を訴える。
環境省、譲渡推進の新施策を発表
環境省は今回の統計発表にあわせ、2026年度から保護猫の譲渡推進に向けた新たな施策を打ち出した。柱となるのは、(1)自治体の譲渡施設の改修・新設に対する補助金を現行の2倍に増額(年間総額30億円)、(2)民間保護団体への運営費補助制度の新設、(3)「保護猫フレンドリー企業」認定制度の創設、の3点だ。
環境省動物愛護管理室の北川誠二室長は「殺処分ゼロという目標に向けて、譲渡数の増加は確かな前進だ。しかし、入口である遺棄や飼育放棄を減らすことと、出口である譲渡を増やすことの両輪で取り組まなければ根本的な解決にはならない」と述べ、適正飼育の啓発にも一層力を入れる方針を示した。
殺処分数は2025年度速報値で6,823匹。ピーク時の2004年度(23万7千匹)から97%以上減少しているが、ゼロには至っていない。環境省は2030年度までに全都道府県での殺処分ゼロ達成を目標に掲げている。
保護猫を迎えたい方へ
お住まいの地域の動物愛護センターや、各地の保護猫団体で譲渡会が定期的に開催されています。環境省の「収容動物検索情報サイト」では全国の保護動物情報を検索可能。譲渡には身分証明書、住環境の確認、トライアル期間(通常2週間)などが必要です。
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