東京都議会は2月23日の本会議で、都内で飼育される全ての猫にマイクロチップの装着を義務づける条例案を賛成多数で可決した。施行は2027年4月1日。全国の自治体で猫のマイクロチップを独自に義務化するのは東京都が初めてとなる。
2022年6月に施行された改正動物愛護法では、ブリーダーやペットショップなどの業者に対してマイクロチップ装着が義務化されたが、一般の飼い主に対しては「努力義務」にとどまっている。今回の都条例はこれを一歩進め、一般の飼い主にも装着を義務づける内容だ。
背景にある「迷い猫」問題
都が義務化に踏み切った背景には、都内で年間約3,200匹にのぼる迷い猫の問題がある。東京都動物愛護相談センターによると、保護された猫のうちマイクロチップが装着されていたのはわずか12%。残りの猫は飼い主の特定ができず、そのまま保護施設に長期収容されるケースが後を絶たないという。
同センターの職員・田辺真理子さんは「首輪は外れることがあるし、室内飼いの猫でも脱走してしまうことはある。マイクロチップがあれば、保護された時点ですぐに飼い主に連絡が取れる。それだけで救える命がある」と話す。
実際、2025年に同センターが保護した猫2,847匹のうち、マイクロチップで飼い主が判明し返還されたのは341匹。一方、チップ未装着で飼い主が見つからなかった猫は1,903匹にのぼった。
費用補助と猶予期間
条例では、新たに猫を飼い始める場合は飼育開始から30日以内にマイクロチップを装着することが求められる。既に飼っている猫については、2029年3月31日までの2年間を猶予期間として設定した。
装着費用は動物病院によって異なるが、おおむね3,000〜5,000円程度。都は低所得世帯向けに装着費用を全額補助する制度を設けるほか、一般世帯にも1匹あたり2,000円の補助金を支給する方針だ。
多頭飼育の場合は、飼育頭数に応じた段階的な補助も検討されている。「5匹飼っていたら1万5千円から2万5千円かかるわけで、それは決して小さな負担じゃない。だから補助は手厚くする」と都の担当者は説明した。
獣医師会は歓迎、一方で懸念の声も
東京都獣医師会の会長・伊藤隆文氏は「長年求めてきた施策がようやく実現する」と歓迎のコメントを出した。「マイクロチップは米粒ほどの大きさで、注射器で皮下に入れるだけ。猫への負担はほとんどない。15年以上の耐用年数があり、電池も不要。最も確実な身元確認の手段だ」と述べている。
一方で、SNS上では「義務化まで必要なのか」「高齢の猫に今さら注射するのはかわいそう」といった反対意見も出ている。これに対し伊藤氏は「装着に年齢制限はなく、高齢猫でも問題なく行える。むしろ高齢猫ほど万が一の脱走時に自力で戻れないため、チップの重要性は高い」と説明した。
「災害の時のことも考えてほしい。首都直下地震が起きれば、何千匹という猫が家から逃げ出す。その時にマイクロチップがあるかないかで、再会できるかどうかが決まる」 —— 東京都獣医師会 会長 伊藤隆文
罰則は「段階的」に
違反者への罰則について、都は段階的な対応を取る方針だ。猶予期間終了後、未装着が判明した場合はまず文書による指導を行い、それでも応じない場合は5万円以下の過料を科す。ただし、猫の健康上の理由で装着できないと獣医師が判断した場合は免除される。
都の担当者は「いきなり罰則で締め付けるつもりはない。まずは周知と啓発を徹底し、飼い主さんに納得して装着してもらうことが大事」と強調した。
都は今後、区市町村と連携してポスターやリーフレットでの周知活動を進めるほか、都内の動物病院約1,800か所で装着キャンペーンを実施する予定だ。
マイクロチップ装着の補助金について
補助金の申請は2027年4月以降、東京都動物愛護相談センターの窓口またはオンラインで受け付ける予定。詳細は都の公式サイトで順次公開される。
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